Don't let me go, Prince!
弥生さんの言葉に堪えきれず涙がこぼれ落ちていく。
大切にしてもらえている事は分かっていたけれど、こうしてはっきりと言葉にしてもらうのは初めてだったから。
「それだけを、ずっと渚に伝えたかったんです。」
「私も、ずっと待っていたの。弥生さんのその言葉を……私は今誰よりも幸せなのかもしれない。」
ずっと彼の事を好きでいて良かった。あの時は不安で弥生さんから逃げだしたけれど、今はこうして想い合える夫婦になる事が出来た。
「帰りましょうか、渚。私は早く帰って、もっと深く渚に触れたいんです。」
さらに強く抱き締められて、そっと耳元で甘く囁かれる。こんな風に甘えられたら私の理性の方がグラグラしちゃうじゃない。
「や、弥生さん!分かった、分かりましたから……っ。」
私は必死で弥生さんから離れて耳を抑える。弥生さんの甘い吐息の感触がまだ残っているんだもの。
赤くなりながら弥生さんを睨むと、彼か嬉しそうな顔をして手を出した。
「さあ、行きましょう。」
私が彼の手に自分の手を乗せると優しくそっと握ってくれる。そこから車まで私達は、初々しい恋人気分を味わいながら二人で手を繋いで歩いていった。
「これからは二人の初めてを1つずつ増やしていけるといいわね?」
「そうですね。今度はちゃんと私が渚の喜んでくれそうな場所を探します。だからその次は渚の番ですよ?」
「いいわね、それ。私だって弥生さんが喜んでくれそうなことを見つけて見せるんだから。」
私達は互いを喜ばせるためのデートプランを決める約束をする。これから私達はすれ違った分だけの時間を少しづつ二人で取り戻していくのよ。
これからいろいろ大変な事も待っているだろうけれど、2人ならきっと乗り越えていけるはずだから。