Don't let me go, Prince!
今、私が弥生さんに可愛いと思ってもらうためには何が出来るだろう?ゆっくりと身体を泡で包んで洗いながら考える。
弥生さんに好かれようと、彼の好きそうな服装やメイクだって頑張った。でも彼は「無理をせず、渚の好きな格好をすればいい」と言うの。
弥生さんは素の私で良いと思ってくれているんだと思っていたし、弥生さんの事を分かるようになったつもりでいたけれど……
「……やっぱり、まだ分かんないわよ。」
そう呟いて、熱いシャワーで全身の泡を洗い流した。今のこのモヤモヤした気持ちも一緒に流れて行ってしまえばいいのにね。
いい香りの湯船の中でちょっとだけ想像する。私が変な甘え方をしなければ、今頃二人一緒にこのお湯に浸かっていたのだろうか?いつも通りの無表情な弥生さんと照れて真っ赤になっている私の2人で……
これ以上考えると辛くなってきそう。夜景を見ながら私は弥生さんの言葉を信じるって決めたんだから、こんなにクヨクヨするべきじゃないわ。前向きが私の良い所だって言われているのだもの。
私はお風呂から上がって、柔らかなタオルで髪と身体を拭く。
落ち込んでないで、今の私に出来る事をしよう!髪を乾かして、少しでも触り心地が良くなるように丁寧に髪を梳く。
肌の手入れも手抜きしないできちんとする。彼が私に触れた時のために……
全てを終えて、部屋に戻ると弥生さんはソファーで考え事をしている様子。何をそんなに考えているの?頑張ると決めた傍から私の心は不安でいっぱいになる。
「弥生さん……私、そんなにダメだった?」
「そうですね……」
弥生さんにあっさりと肯定されてしまって私はショックで声が出ない。聞かなければ良かったと今更思ってもどうしようもない。
「渚の素肌に触れているだけでも我慢していたのに、あんな風に可愛い行動をとられてしまってはいくら私でも我慢出来なくなってしまいます。」