Don't let me go, Prince!



 思ってもみなかった弥生さんの言葉に、私は驚いて返事をする事が出来ない。
 我慢って……弥生さんの言っている意味って、きっとそう言う事なのよね?もしかして弥生さんは私が甘えたのを嫌ではなく嬉しいと思ってくれていたって事?

「渚に浴室では触れないと約束しましたから、私なりに頑張っていましたが……あんな風に抱きつかれ甘えられては、私だってどうしようもなくなるんです。だから、渚には悪いと思いましたが先に上がりました。」

「どうしようもって……」

「私が渚を抱きたくて堪らないと言う事です。あのまま一緒に居れば私は浴室で無理矢理渚を抱いていたでしょう。」

 弥生さんの言葉で、私はお風呂場で彼に自分の嬌態を晒す姿を想像してしまう。あまりの恥ずかしさに頭の中が沸騰してしまいそうだわ。
 弥生さんが私に触れるのに、無理矢理なんてある訳がないわ。だって弥生さんに触れられるのは私だって嬉しいんだもの。

「弥生さんは、そんなに私の事を欲しがってくれているの?こんな、ちっとも可愛く甘えられないような女でも……?」

「ええ、今すぐにでも。渚は私の知っている女性の中で一番可愛いですよ。」

 そっと弥生さんの右手が私の頬に触れる。お風呂に入った後だというのに、貴方の手はやっぱり冷たいのね?

「もっと、もっと言って?もっと……その手で私に触れて。」

 上目遣いで強請るように、素直に弥生さんに甘えて見せる。弥生さん、ずっと私の事を「可愛い」って言って?
 冷たい指先が頬から首筋を伝い、鎖骨をなぞってパジャマのボタンにたどり着く。

「渚が自分で脱ぎますか?それとも私に脱がせてほしいですか?」

 ボタンに触れながらも弥生さんはそれ以上には進もうとしない。私が答えを出すのを待っているの?


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