Don't let me go, Prince!
番外編 出会い
灘川 渚
18歳 高校三年生
四ツ谷 弥生
22歳 大学四年生
彼を初めて見たのは、騙されてエントリーされた高校の文化祭のミスコンでステージの上に立たされている時だった。
ステージで特技を披露するように言われて、歌って踊ってみせている時に強い視線を感じたの。
太い黒縁眼鏡の奥……綺麗な瞳をした男性が、歌う私をジッと見てる。
まだ暑い季節だというのに、厚手の真っ黒な服を着てる。見た感じだと、大学生かしら……?
私が踊りながらステージのどこに移動しても、彼の視線が外れることはない。
歌が終わって、ステージの一番前でお辞儀をしようと前に出ると、先程の男性が口元をハンカチで押さえてステージから離れていくのが見えた。去っていく彼は、少しふらついているようだった。
私は何となく視線の彼が気になって仕方なかった。
昔から、私は思いついたら即行動!というタイプではあったと思う。
お辞儀をしてステージの上から降りると、私は実行委員に声をかける。
「もう出番も終わったし、自由行動でいいわよね?私、用事が《《出来た》》から、ちょっと行ってくるわ。」
「はあ?おい、お前優勝候補なんだぞ?発表の時いなかったら……!」
「はーい、それまでには帰ります!」
簡単に返事をして、私はミスコンの衣装のまま売店へと走る。本当は直接追いかけたいけど仕方ない。
「おばちゃん、これ頂戴!」
私は売店に駆け込むと、ミネラルウォーターのペットボトルを取ってお金をレジに置いた。
「あれま、渚ちゃんったら可愛い格好しちゃって。ミスコンに出たのかい?」
「押し付けられちゃったのよ、歌って踊って大変だったわ。……じゃ、私急いでいるから。」
私はペットボトルを持って先程の男性が向かった方向へと走る。確かこっちのほうに歩いていったと思うんだけれど……