Don't let me go, Prince!



 私が財布にメモを入れたのを確認すると、四ツ谷先生はすたすたと病院の中へと戻っていった。何だったの、一体?

「……ほんとうに、変わった先生だわ。」

「お姉ちゃん、四ツ谷先生にナンパされちゃった?」

 後部座席からシュン君が揶揄ってくる。全く今どきの子はこういうことばっかり詳しいんだから……!あんな美形な先生が私をナンパなんて、まさかね。

「そんな訳ないでしょ!もう出発するから、シートベルトちゃんとつけなさい。」

 車を出発させてシュン君の家へ。そっと彼を車から降ろしてインターフォンを鳴らすと、すぐにお母さんが出て来た。

「ああー!良かった。今から病院に向かおうと思ってたんです。シュンが迷惑をかけてすみませんでした。」

「いいえ、捻挫で済んだようです。シュン君が何でもハキハキと教えてくれるお子さんで助かりました。」

 シュン君は私から離れて、お母さんの横まで歩いていき微笑んでる。やっぱりまだ心細かったのでしょうね。

「あ。そうだ。四ツ谷先生から何かあったら連絡するようにと電話番号のメモを渡されたんです。どうぞ。」

「四ツ谷先生が、電話番号……?」

 私はメモを差し出すと受け取ったシュン君のお母さんは何やら考えている様子。

「ふふふ、この紙は私は受け取れないわ。きっと四ツ谷先生ががっかりしちゃうもの。これは貴女が持っていてあげて?」

「私が、ですか?」
 
 メモ用紙を返されて、私はまた彼の番号を財布の中へ。どうして私が持っていないと四ツ谷先生ががっかりするのかしら?  


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