Don't let me go, Prince!
「新しく優秀なシェフが入ったからね。俺がサボっていても大丈夫。……で、お姉さんのお名前と年齢は?」
どうやら新城さんは弥生さんに何を言われても聞き流してしまう性格のようね。気にもしないで、私に質問してくる。
でも、それくらいの方が弥生さんとは付き合いやすいのかもしれないけれど。
「あ、私の名前は灘川 渚です。今28歳です。」
「28歳?俺の妹と年が近いね。妹は△△高に通っていたんだよ、渚さんは知ってるかな?」
え?△△高校ですって?思わず新城さんを見上げてしまう。
「私も……その高校でしたけど?」
私がそう言うと新城さんも驚いた顔をする。私を見た後、なぜか弥生さんをジッと見つめる新城さん。
「へえー、なるほどね……」
何がなるほどなの?彼は弥生さんを見ながらニヤニヤと笑っている。
私が新城さんに尋ねるように見る、だけど彼は小さな声で「ナイショ」と言うだけで……凄く気になるんですけれど?
「そういう事なら、気合を入れて作っちゃおうかね。」
「うるさいですよ、新城。いいからさっさと戻ってください。」
弥生さんは本当に新城さんに早く戻ってほしそうだし、それを知らん顔している新城さんもなかなかいい性格。
ちょっと見てみたかったかも、この2人の学生時代を。
「はいはい。じゃあ楽しんでいってね、渚さん。」
そう言って新城さんは、キッチンへと戻っていった。新城さんと話して、弥生さんの気になる事ばかり増えたような気がするわ。