Don't let me go, Prince!



 弥生さんはどう思っているのかしら?このまま私と別れて、もう会えなくても気にしていないの?……それは少し寂しい気がする。
 会いたいなら自分から弥生さんを誘えばいいだけの事なのだけれど、いろんなことを秘密にされてしまっているので私からは誘いにくい。

 それでも車はどんどん進んで、もうすぐ駅についてしまう。赤信号で車が止まると、今までこちらを見ようともしなかった弥生さんが私の方に顔を向けた。

「もう暗いので、貴女の家まで送ります。場所はどこですか?」

「あ、はい。××町にあるドラッグストアのすぐ近くです。分かりますか?」

 弥生さんは「分かりました」頷くとまた車を走らせる。弥生さんは無表情だけど、とても優しい。でもそれはきっと私だからじゃなくて、他の誰にでもきっとそうなのだと思う。

「ここで良かったですか?」

 弥生さんの車が私の家の前で止まる。結局弥生さんと次の約束をすることは出来なかった。

「はい。今日はとても楽しかったです。ありがとうございました。」

 お礼を言って車のドアを開けようとすると、後ろから私のカーティガンがピンと引っ張られる。
 後ろを振り向くと、弥生さんが私の服を指でつまんで引っ張っていた。

「もし、本当に貴女が楽しかったのなら……」

「はい。本当に楽しかったです。」

 私は嘘はついていない。弥生さんといると私ばかりが振り回されちゃうけど、それもどうしてか嫌じゃないの。

「……では、もう一度渚さんと出掛けたいと我が儘を言ってもいいですか?」

「……ふふ、いいですよ?何回でも、我が儘言ってください。」

 もしかしたら、弥生さんも私の様にどうやって誘おうか悩んでいたのかもしれない。そんな可愛い所を見せられて、私はどんどん弥生さんの事が気になっていく。


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