Don't let me go, Prince!
我が儘なんて言わなさそうな弥生さんが、私にはちょっとだけ甘えてくれる。そんな特別が嬉しいと思えてしまう。
弥生さんの事が気になってしょうがなかった時点で、こうなる気はしていたの……
――――多分、私はすでに弥生さんに惹かれてしまっている。
「また、メッセージ下さい。私、待ってますから。それじゃ……」
自分の想いを自覚したことを弥生さんに悟られないように、私は急いでドアを開けて車から降りる。そんな私に弥生さんは一度頭を下げてから車を発進させた。
「今の素敵な男性、誰なの?」
弥生さんの車を見えなくなるまで見送っていたのに、いきなり後ろから声を掛けられて飛び上がりそうなほどビックリする。
「お母さん、こっそり見ていたの?」
「たまたまよ?ちょっとお隣の奥さんと話していた帰りだっただけ。で、さっきの人は?」
母は興味津々という顔で聞いてくる。私にここ数年、恋人がいなかったのを知っているから余計に気になるのかもしれない。
「この前話したでしょ、電話番号もらった四ツ谷先生……」
「へえ、あの人がそうなの?凄くいい男じゃない、あんた頑張りなさいよ?」
何もかも分かったように、笑いながら家へと入っていく母に参ってしまう。どうしてこんなに簡単にバレてしまうのだろう?
「言われなくても、頑張るし……」
次に誘ってくれたのも弥生さんからだった。私は少しくらい弥生さんの気持ちを期待しちゃってもいいのかしら?
期待もしてるけど、不安もある。だってあんなに女性にモテそうな人なんだもの。私はドキドキしながら次の約束の日を待った。