Don't let me go, Prince!
番外編 求婚
弥生さんとの約束の日はすぐに来た。弥生さんが私の休みに合わせて日にちを決めてくれたから。
「今日、お仕事大丈夫だったんですか?」
「はい、きちんと今日の仕事は終わらせているので大丈夫ですよ。ですが遅くなってしまってすみませんでした。」
約束の時間より30分遅れてやってきた弥生さん。でも彼の仕事を考えると責める気にはならなかった。
「今日はこの前とずいぶん雰囲気が違いますね……」
そう、この前は弥生さんが好みそうなお淑やかな格好をしていた。でも、今回は素の私を見て欲しくて普段好んで着る服にしたの。
白のカットソーにデニムのクロップドパンツ、弥生さんの好みではないと思うけれど。
「こういうのは、好きじゃないですか?」
「……いいえ、可愛いと思いますよ。」
でも、そう言った弥生さんの口元は少しヒクついていて、やっぱり彼の好みじゃなかったのだと少し落ち込んだ。
私はいつも素の自分を好きにはなってもらえない。いつも外見が綺麗だからとか、スタイルがいいからとかそんな理由の人ばかり。
――――もしかしたら、弥生さんはそうじゃないのかもって思いたかったのかも。
チラリと運転席を見ると、真剣な弥生さんの横顔が見れる。素敵だな、って素直に思うの、この時間を今は大切に出来ればそれでいい。
「今日シュン君が来たんですよ。彼の足、すっかり良くなりました。」
「本当ですか?良かったぁ、木から落ちた時はどうしようかと思ったけれど。」
私はあれからシュン君とは会っていなかったから、彼が元気だと聞いて安心する。