Don't let me go, Prince!
チケットを購入して遊園地の入り口を抜けるとそこは別世界のようで……幻想的、とでもいうのかしらね。
「私、夜の遊園地って初めてなんです。」
「それは良かったです。あまり時間はありませんが楽しめるといいですね。」
弥生さんにそう言われて、私はコクコクと頷く。昼に来る時と全く違う顔を見せる遊園地に、私はワクワクが止まらなかった。
気になるものを見つけて、私は思わず走り出してしまう。
「弥生さん、早く早く!見てよ、メリーゴーランドがキラキラと夢の国の乗り物みたいじゃない?」
「渚さん、そんなに急ぐと危ないですよ。ああ、本当にこれは綺麗ですね。」
弥生さんは私の隣に立って一緒にメリーゴーランドを眺めてくれる。なんとなく、弥生さんの瞳がいつもより優しい感じがするの。
「渚さんは、馬に乗りますか?馬車に乗りますか?」
「ふふ、弥生さんには私が大人しく馬車に乗ってそうに見えるの?ああ、でも……本当に王子様が迎えに来てくれたら、馬車に乗りたいかな?」
そう言って笑って見せる。今のところまだ私を馬車に乗せてくれる王子様は現れていないけれど。
「王子様が迎えに……ですか。渚さんは本当に言う事が可愛らしい。」
「もう、子供っぽいって思うでしょう?でも私もそんな普通の夢を見ちゃうような女なんです。」
普段は大人っぽい容姿に合わせて大人っぽく振舞っているけれど、本当の私は自分だけの王子様に愛されることを願うような普通の女なのよ。
「それでいいのではないでしょうか?そういう可愛い所も全部含めて、貴女は灘川 渚さんなのですから。」