Don't let me go, Prince!


 私との思い出のため?弥生さんはそれだけのために苦手な絶叫マシンに乗ってくれたって言うの?

「弥生さんって、もっと冷めている男性かと思っていたの。そんな可愛い事を言われるとは思わなかった……」

 貴方は完璧な大人の男性だとばかり思っていたの。隙が無くスマートで私では弥生さんの隣を歩くことは出来ないと思っていたくらいだし。

「冷めている……ですか?」

「ううん、そう思っていたけれど全然違うのね。でもね弥生さん、思い出は絶叫系でなくても作れるのよ?」

 そう言って微笑むと弥生さんはキョトンとした顔をする。どうしてかしらね、そんな貴方を見ていると心がほわっと温かくなるの。

「渚さんは絶叫系に乗らなくてもいいんですか?貴女はそういうのが好きなんでしょう?」

「……そうね。でも、今日は弥生さんの隣で、二人一緒に楽しみたいのよ。」

 弥生さんが笑ってくれなくても、隣で私が二人分笑うから素敵な思い出を作りましょうよ。
 私は弥生さんと一緒に乗れるものが無いか、キョロッと周りを見てみる。……ああ、あれならどうかしら?

「弥生さん、高い所は平気?」

「ええ、別に高い所は大丈夫ですが。どうしました?」

「じゃあ、2人で乗りましょう?夜の観覧車。」

 私は来る時に見えた綺麗な光に包まれた観覧車を指さした。あれに乗って見下ろす夜の遊園地はきっととても綺麗でしょうね。
 弥生さんは静かに頷いてくれたので、2人で観覧車の場所まで歩く。

 前を歩くカップルが仲良さそうに手を繋いでいるのを見て、勇気を出してみようかと思うけど……やっぱりまだ無理かしらね?

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