Don't let me go, Prince!



 弥生さんの隣に並んで順番を待つ。夜の観覧車だからか、カップルか女の子同士が多いみたい。
 私達がゴンドラに乗る番が来て、弥生さんが先に乗り込む。私も彼に続いて乗り込んで座る。

「並んでいましたが、思ったより早く乗れましたね。」

「そうね、きっと夜の観覧車は人気なんでしょうね。私も初めてだからワクワクしてるわ。」

 私は少しずつ上昇していくゴンドラの中で、弥生さんと距離を縮める方法がないかを考える。
 触れたいの、その綺麗な手に。だけど弥生さんから私に触れようとはしてくれない。
 
 自分の気持ちに気付いて欲しくて、ジッと弥生さんを見つめていると、ゴンドラの中はそんなに暑くないのに彼が少し汗をかいているのに気付いた。
 そう言えば弥生さんの表情がいつもより少し険しい様な――――?

「どうかしたの、弥生さん?ほら、汗かいてる」

 私はバックからハンカチを取り出して彼の額の汗を拭く。弥生さんはこういう時、素直に大人しくしてくれるから助かるわ。

「……その、少し緊張していまして。」

「緊張って?いったい何に……?」

 私がそう尋ねると弥生さんは「秘密です」と言って教えてはくれなかった。

 ゴンドラはあっという間に頂上近くまで上がり綺麗にライトアップされたアトラクションとキラキラ光るイルミネーションで本当に綺麗だった。

「弥生さん、キラキラと光の橋みたいに見えるわね。夜の遊園地は本当に夢の国みたい。」

「そうですね、でも私達のこの時間は夢じゃないですよ。」

「そうね、今こうして弥生さんといる時間は私にとっても大切な時間だもの。貴方と過ごす今が現実だから、私はこんなに楽しいのよ。」

 微笑みながら、そう言うと弥生さんはなぜか私から目を逸らして「……私もです」と返事をくれた。
 もしかして少しテレてたりするのかしら?

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