Don't let me go, Prince!
「もうすぐ閉園時間ですね。」
弥生さんに言われて時計を見る。観覧車の後はイルミネーションなどを2人で見たりしていたので、あっという間に時間が過ぎていたみたい。
「もう、終わりなんですね……」
弥生さんと過ごす時間が楽しすぎて、たった数時間じゃ足りないって思っちゃったの。もちろんそんな我が儘を、弥生さんに言えるわけがないのだけど。
「それじゃあ、帰りましょうか。」
待って!私は、まだ……貴方から教えてもらいたいことがあるの。私は弥生さんのシャツの裾を摘まんで引っ張って彼を止める。
「……あのっ……」
「はい、何でしょうか?」
ツンツンとシャツを引っ張って、必死な顔で振り返ってくれた弥生さんを見る。見た目と違い割と奥手な私には、今はこれが精一杯。
「私……弥生さんとメリーゴーランド乗りたいのっ。」
お願いしてるつもりなのに、どうしてこういう言い方しか出来ないのよ。自分の言葉に反省して、弥生さんに謝りたい気分になってしまう。
「いいんですか?渚さん馬車に乗るんですよ……?」
「いいんです……」
弥生さんの問いには答えたけれど、これ以上彼の顔を見ることは出来なかった。だってわかったはずだもの、私の言っている言葉の意味が。
「急いで行きましょう。」
弥生さんに急かされて私はメリーゴーランドまで走る。閉園間近のメリーゴーランドには人はいなくて私と弥生さんの二人だけ。