Don't let me go, Prince!


「もうすぐ閉園時間ですね。」

 弥生さんに言われて時計を見る。観覧車の後はイルミネーションなどを2人で見たりしていたので、あっという間に時間が過ぎていたみたい。

「もう、終わりなんですね……」

 弥生さんと過ごす時間が楽しすぎて、たった数時間じゃ足りないって思っちゃったの。もちろんそんな我が儘を、弥生さんに言えるわけがないのだけど。

「それじゃあ、帰りましょうか。」

 待って!私は、まだ……貴方から教えてもらいたいことがあるの。私は弥生さんのシャツの裾を摘まんで引っ張って彼を止める。

「……あのっ……」  

「はい、何でしょうか?」

 ツンツンとシャツを引っ張って、必死な顔で振り返ってくれた弥生さんを見る。見た目と違い割と奥手な私には、今はこれが精一杯。

「私……弥生さんとメリーゴーランド乗りたいのっ。」

 お願いしてるつもりなのに、どうしてこういう言い方しか出来ないのよ。自分の言葉に反省して、弥生さんに謝りたい気分になってしまう。

「いいんですか?渚さん馬車に乗るんですよ……?」

「いいんです……」

 弥生さんの問いには答えたけれど、これ以上彼の顔を見ることは出来なかった。だってわかったはずだもの、私の言っている言葉の意味が。

「急いで行きましょう。」

 弥生さんに急かされて私はメリーゴーランドまで走る。閉園間近のメリーゴーランドには人はいなくて私と弥生さんの二人だけ。

< 159 / 198 >

この作品をシェア

pagetop