Don't let me go, Prince!


 弥生さんが黙って馬に跨ったので、私は弥生さんが乗った馬の後ろの馬車に乗り込む。私はメリーゴーランドが回っている間、ただ弥生さんの後姿を黙って見つめていた。
 もし、弥生さんが私の気持ちを分かってこうしてくれているのなら……私は貴方に期待してもいいの?

 今までの恋愛で上手くいってきたとは言えない私だけど、弥生さんとは違う恋愛が出来るような気がするの。

 音楽が終わりメリーゴーランドが止まる。弥生さんが馬から降りたのを確認して私も馬車から出ようとすると、目の前に弥生さんが手を差し出してくれた。

 私が喜んで弥生さんの手に自分の手を重ねようとした、その時……

「結婚しませんか?」

 弥生さんの言葉をちゃんと理解できなくて、首をかしげて微笑んでしまう。だって私はこの時、弥生さんからお付き合いの申し込みをされると思っていたのだから。

「渚さん、私の妻になってくれませんか?」

「えっと……私が妻、ですか?」

 いきなりのプロポーズにちゃんと返事なんて出来るわけもなく、私はオロオロと戸惑うばかり。

「とりあえず出ましょう。返事は後から聞かせてください。」

 もう一度手を差し出され、今度こそ私は彼の手に自分の手を重ねた。キュッと手を握られて弥生さんに引かれて夜の遊園地を後にした。

 初めてつないだ手、弥生さんの手は想像していたのよりずっと冷たい。でもこの温度は嫌いじゃないわ……

「渚さんの手、温かいですね。」

 そう言って弥生さんが繋いだ手に力を入れるから、嬉しくてにやけてしまいそうになるの。

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