Don't let me go, Prince!


 ぎょっとした私を見て満足そうに頷きバスルームへと行ってしまう弥生さん。もう彼の中ではきっと私に何をさせようか決まっているのでしょうね。
 何をさせられるか考えるとちょっと不安にもなるけれど、弥生さんの表情が少し楽しそうにも見えたから……まあいいわ。

 私は弥生さんが入った後に自分が入るための準備をして、部屋を見渡す。今日からここで2人だけの生活が始まる。
 寂しかった新婚生活と、今度は違う。きっと私があの時に望んでいたような二人の暖かな生活が待っているはず。

 細かい片付けをチョコチョコとやっていると、弥生さんがシャワーを浴びて出て来たので交代で私もシャワーを浴びた。

「夕食は久しぶりに新城の所へ行きませんか?引っ越ししたことも伝えなければいけませんし。」

「新城さんのお店に?また連れて行ってくれるの、弥生さん。」

 弥生さんが大学からの知人と紹介してくれた新城さんは、明るくてとっても面白い人。新城さんと話してる時の弥生さんはいつもよりちょっと子供っぽい。もちろんそんな弥生さんも魅力的なのだけど。

「新城に今度はちゃんと《《私の妻》》だと紹介します。ついてきてくれますね、渚。」

「もちろん、喜んで……」

 弥生さんの気持ちが嬉しくて、そっと彼のシャツの袖を引っ張る。こんな事を言われると甘えたくなる。
 ううん、少しでいいから甘えさせて……

 弥生さんがそっと私の後頭部に手を添えて抱き寄せてくれたから、私は遠慮なく彼に甘えることにした。

「新城の店に行くのは止めたくなってきました……」

 顔を上げて「どうして?」と聞いてみる。私の事を妻と言ってくれるのを楽しみにしているのよ?

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