Don't let me go, Prince!



「渚と二人きりの、この幸せな時間を終わらせたくないので。」

 こうして過ごせる二人の時間を大切に思ってくれる弥生さん。そういう所もとても素敵だと思うけれど……

「そうね、でも……私は早く新城さんにも弥生さんの妻だと紹介して欲しいわよ?」

 今までずっと屋敷の中でしかあなたの妻でいられなかったから、こうして堂々と貴方の隣に立てるようになったのが嬉しいの。私だって弥生さんを私の夫として皆に紹介したいくらいだしね。

「渚がそう言うのならば……新城との約束の時間もありますし仕方ありませんね。」

「ふふ、弥生さんが私を優先して彼との約束の時間に遅れたりしたら新城さんきっとビックリしちゃうんじゃないかしら?」

 時間にきちんとしていそうな弥生さんの事だもの。きっと今まで約束の時間を破ったりしたことは無いでしょうしね。

「新城の面白がる顔が目に浮かぶようです……」

「それはいけないわね、じゃあ私は急いで準備をしてくるわ。」

 新城さんに揶揄われるのを想像したのか、額に手を当てた弥生さんが可愛くてもっと見ていたかったけれど本当に時間がなさそうだったので私は急いで準備に取り掛かる。
 弥生さんは渚の好きな格好をしていいといつも言ってくれるけれど、彼に似合う妻でいたいのも私の本音だから……
 今日は弥生さんの黒のスーツに合うように、大人っぽい淡い色のワンピースに決めて髪をアップにまとめた。

「渚、そろそろ出ましょうか?」

 弥生さんにドアの向こうから声を掛けられ、私はバッグを持って彼に今日の格好を見てもらう。私しか分からないようなわずかな微笑みを見せてくれるようになった弥生さん。それが今の私の心を温かくしてくれる。

「とても、似合っていますよ。」
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