Don't let me go, Prince!
ヤキモチを妬いた時の弥生さんの言葉は可愛い。ずっとそうやって私を優しく束縛していて欲しいの。
「ふふ、そんな言葉一つで私をこんなに喜ばせることが出来るのは、これからもずっと弥生さんだけよ?新城さんの事は面白いお兄さんだとしか思っていないわ。」
ニコリと微笑んでそう言えば弥生さん驚いたような顔をした後、少しテレたように咳払いをする。こうして素直な彼を見せてくれるたび、私の心にあった不安も不満もどんどん消えていくような気がするの。
「それならば、いいのですが……」
「私は四ツ谷 弥生の妻の四ツ谷 渚なの。弥生さんが思っているより、ずっと私は貴方に夢中なのよ?」
好きだと思っているのも、いろんな人に嫉妬するのも弥生さんだけじゃないのよ。私だって本当は同じように貴方を束縛してしょうがないんだから。
「……私をそうやって言葉一つで喜ばせるのも渚だけですよ。貴女は私の心をこんな風に振り回してしまう本当に困った妻です。」
「そんな事を言われるともっと困らせてみたくなるでしょう?」
弥生さんの言葉にちょっとだけ調子に乗ってしまう。こういう所が自分の欠点だと分かっているはずなのに。
ピクリと弥生さんの眉が動いたのを見て自分の失言に気づいたの。赤信号で車が止まったと同時に弥生さんに右手を捕まえられてしまう。
「渚はそんな意地悪を言うんですね。そんな事を言う妻は、私だって困らせてみても問題ないですよね?」
「私を困らせるって……何を?」
右手を取り返そうとしても、弥生さんの強い力で握られていてビクともしない。弥生さんの瞳にジッと見つめられてしまうと、私にはもう抵抗なんて出来なくて……
「渚、貴女の困った顔を見るのを楽しみにしてますよ。」