Don't let me go, Prince!
「どうなんですか?渚、答えてください。」
スッと近寄られて問いただされて、私の方が焦ってしまう。そんなに深く考えて言った言葉ではなかった、どうしてそんな事が知りたいの?
いつも冷たい瞳でそんな風に真っ直ぐ見つめないでよ。嘘をつくことを許さない彼の瞳に私は降参する。思ったままに話すしかなさそう。
「だって弥生さん、食事中ずっとお漬物を睨んでいたのよ?好き嫌いなんて無さそうな貴方がそんな事をするんだもの……ちょっとだけ可愛いなって思ったわ。」
さすがに恥ずかしくなって、最期は俯いてボソボソと呟くことしか出来なかった。こんな事を言うなんてあまりしたこと無いもの。弥生さんは大真面目に聞いてるし。
返事を待つけれど、弥生さんからは何の言葉も返ってこない。私の言ったことがよほど気に入らなかったのかしら?彼の様子が気になり、下げていた顔を上げてそっと彼を見上げてみる。
いつもと変わらない無表情?そう思ったけれど彼の唇が小さく震えている事に気付く。……教えて、それ表情はどういう感情から?
「……渚、やはり貴方を今ここから出すことは出来ません。」
「え?どうしてそんな話に?」
絞り出すように出されたのは私への監禁令。意味が分からないわ、さっきの会話でどう考えればそういう事になるの?
彼はどうして私をここに閉じ込めようとするの?今じゃないのなら、いつになれば出してもらえるのか教えてはくれないの?
「渚を苦しめるのは良くないと、そう考えてこのまま渚の望むように実家に戻そうかとも悩んだんです。でも……やはり無理です。渚、貴女ならきっと私を……」
弥生さんはいつもの無表情に戻って私に一歩ずつ近寄ってくる。どこか焦ったようなピリピリした雰囲気を纏う彼に、私は少しずつ後ずさりをし始める。
彼の表情に焦りと少しの苦痛が見れる。私はその訳を教えて欲しい、貴方のそれに手を差し伸べたいのに。……その気持ちは伝わらない。
「……昼間の続きをしてもいいですか?今すぐ、渚が私の妻であると証明して見せて欲しいんです。」
本当にこんな方法で証明が欲しいの?だったらこんな風に力づくでしか手に入れられないんだって、諦めたような顔をしないでよ!