Don't let me go, Prince!
そう言って私に大きな花束を強引に渡してくる新城さん。確かにお花は綺麗なんだけれど……これを渡された私はどうすればいいの?
「新城、渚はまだ貴方をよく知らないんです。あまり彼女を驚かして困らせないでください。」
さっきは自分が私を困らせたいなんて言っていたくせに……新城さんが私を困らせるのは駄目らしい。これは弥生さんの優しさなのか、それとも私への独占欲なのかしら。どちらにしても嬉しいのだけれど。
「いいじゃないか、彼女を驚かせたくてやっているんだから。どうせ弥生は少しも驚かないからつまらないだろ?」
「今更、新城のそういう性格には驚きませんよ。ですが……」
チラリと弥生さんが見るのは私が抱いた大きな花束。もしかして弥生さんは新城さんが私に花束を渡したことに嫉妬しているの?
「へえ、弥生がそんな顔を俺に見せるなんて……これから弥生をからかうのが楽しくなりそうだな?」
「悪戯が好きな所も相変わらずですね、それで楽しいのは新城だけでしょう?」
二人のやり取りを見ていると、クスリと笑いたくなってしまう。
だって新城さんに見せている弥生さんの顔はいつもの弥生さんとは別人のようだから。学生時代の友人相手だからなのか、弥生さんがいつもより少し可愛く見えてしまうの。
「俺が楽しむためにやっているんだから、俺が楽しいのは当然だろ?」
「新城、そこは「客を楽しませるため」と言うべきなんじゃないんですか?シェフのあなたが一番楽しんでどうするんです。」
少し天然っぽい新城さんに、真面目に返事をする弥生さん。この二人は大学時代からこうだったのかな?私もその頃の弥生さんたちを見たかったな……
私達の出会いが学生時代という事は思い出したけれど、その頃の弥生さんを見たのは一度だけで……ずっと彼を見れる位置にいた新城さんが羨ましかったりするの。