Don't let me go, Prince!
「客を喜ばせるためには、まず自分がハッピーじゃないといけない。それが俺の信条だからな。」
「新城らしい言葉ですね。まあ、あなたはいつも幸せそうに見えますが。」
胸を張って答える新城さんに少々呆れ気味に返事をする弥生さん。
弥生さんは新城さんの事を友達だとは言わなかったけれど、きっと弥生さんは新城さんの事をとても信頼しているはず。だって弥生さんは、私にも見せてくれないような顔で新城さんと話しているんだもの。
「弥生だって今は幸せなんだろう?渚さんと本当の意味での新婚生活が出来ているんだから。」
「もちろん幸せですよ?まあ正しくは、今日から二人きりの新婚生活が始まる……のですけどね。」
新城さんの問いにハッキリと「幸せ」だと言ってくれた弥生さん。私ももちろん幸せだけれど、彼がこんな風に迷いなく答えてくれることが嬉しい。
「なるほど、な……さっきから弥生が早く帰りたそうな顔をしてるわけだ。せっかく俺がこうして祝ってやっているのに。」
「別に私は、帰りたそうになんて……」
新城さんの言葉が図星なのか、弥生さんはそれ以上言い返さない。今夜、この店に誘ってくれたのは弥生さんの方からなのに……?
「弥生さんは早く帰りたいの、どうして?」
私は不思議に思って、弥生さんたちの会話の途中なのに割り込んで聞いてしまう。だって二人ともこんなに楽しそうじゃない?
「……弥生、渚さんって意外と天然なんだな?」
「新城が余計な事を言うからです。いいんですよ、そういう所も渚の魅力の一つなんですから。」