Don't let me go, Prince!


 帰りの車の中、私は弥生さんの学生時代の話が聞きたいと強請ってみた。
 新城さんと弥生さんは実は高校生の時からの付き合いで、成績ではトップを競いあっていたんだそう。

「弥生さんと……《《あの》》新城さんが?」

「ええ、新城は勉強をしているようには見せませんでした。しかしテストではいつも一位か二位だったんです。信じられないでしょう?」

 本当に信じられないわ。新城さんって本当に奥が深い人なのね……
 楽しいおしゃべりを弥生さんとしていると、時間が過ぎるのは早くてあっという間に私たちの新居へと帰りつく。

 鍵を開けて照明をつける。まだ完全に片付いてはいないけれど、足りないものもたくさんあるけれど……ここが新しい私たち二人の場所になるのよね。

「渚、どうかしましたか?」

「ううん。これからの二人の生活を想像すると胸が弾んでしまって……」

 そう言って、弥生さんの胸にそっと寄りかかる。今は何だか弥生さんに甘えたい、そんな気分になってしまっていたの。

「渚、そのまま私に捕まっていてくださいね?」

「え? や、弥生さんっ!」

 弥生さんはキョトンとする私の脇と膝裏に手を差し込み軽々と抱き上げてしまった。弥生さんは私を抱えたまま歩きだして、寝室のドアを私に開けるように指示をだす。
 私がドアを開けると弥生さんは寝室に入り私をベッドに降ろす。
 だけど彼はそのまま私に覆いかぶさって来て……

「弥生さん、ストップ!ちょっと待って、私はまだお風呂に……!」

「新城の店に行く前に、渚はシャワーを浴びたから問題ないでしょう?私はずっと我慢していたのでもう待てません。今度は渚が私の言う事を聞いてくれる番ですよね?」

 抵抗しようとしていた私の手首をベッドに縫い付けて、弥生さんが私を見下ろしている。

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