Don't let me go, Prince!
番外編? 2人で見る未来
「今度の日曜に馨さんとその恋人が家に遊びに、ですか?いいと思いますよ、渚の気分転換にもなるでしょうし。」
私が作った夕飯を2人で食べながら、妹の灘川 馨と電話で話した内容を弥生さんに聞いてもらっていたの。
私と弥生さんが上手くいっている事を馨はとても喜んでくれて、今度仲のいい二人の姿を見せて欲しいといわれたのだった。
「……いいの?私、本当に2人を招待しちゃうわよ?」
「構いませんよ。たまには馨さん達と思いきり話したいでしょうし。」
「ふふふ。ありがとう、弥生さん!」
ちょっとだけ「渚と二人きりが良いです」なんて言ってくれないかな、なんて思ったのは秘密にさせてね。
「それで、どんな男性なんですか?馨さんのお付き合いされている方は。」
「知らないわ。」
ハッキリと答えた内容にぎょっとした顔をする弥生さん。だって私は馨の恋人と、会ったことも話したことも無いのよ?
「弥生さんが悪いのよ?馨に好きな人が出来てすぐに私を監禁しちゃうんだもの。」
そう、私が馨の手助けをしようと思っていた矢先に弥生さんは私をホテルに閉じ込めてしまったの。
「すみません、監禁……しているつもりはなかったのですが。渚にはつらい思いをさせてしまいました。」
「もう、そのことで謝らないで?ホテルの生活はそんなに辛くはなかったし。」
今はもう笑い話よ。あの場所での時間があったからこそ、今こうやってあなたと幸せな時間を過ごすことが出来るんだから。
「それよりも、恋人と言えば考えていたことが一つあったんだけど……」
食事が終わり食器を片付けて、2人でソファーに座って紅茶を飲むのが最近お気に入りの時間になっている。
話題を変えるのにもちょうど良かったし、前から気になっていたことを弥生さんに聞いてみることにしたの。
「何です?」
「時々考えるの。私達も普通にお付き合いが出来ていれば、甘い恋人たちのような時間を過ごしたりしたのかなって……?だって弥生さんの場合、いきなり「妻になってくれませんか?」だったんだもの。」
確かに彼からのプロポーズを受けて結婚するまでの期間、私達は恋人だったのかもしれない。
だけど……あの頃の私達は結婚式の準備を一緒にしているだけの関係で、とても恋人のような甘い雰囲気は無かったのよ。
「渚は甘い恋人期間が欲しかったのですか?」
弥生さんは、少し困ったように私を見ている。分かっているわ、いまさらそんな事を言うのは私の我が儘だって。
「そうね、馨の話を聞いて無いものねだりしているのかもしれないわ。ちょっとだけ私も恋人気分を味わいたかったのかも?」
そう言ってそっと弥生さんの肩に寄り掛かる。今こうしているだけでも十分幸せなのに。
「ごめんなさいね、ちょっとだけ初々しい恋人同士の馨の話を聞いて羨ましくなったのだけなの。」
「……恋人気分は叶えてあげられませんが、これから私と新婚のような蜜月を過ごしませんか?」
そっと腰に手を回されて弥生さんの方へと抱き寄せられる。聞こえてくる彼の心臓の音が早くて、弥生さんも緊張しながら話してくれているのだと分かる。