Don't let me go, Prince!
「ふふ、例えばどんな?」
弥生さんの提案は勿論嬉しい。でも私は今でも充分蜜月の気分を味わえているのだけれど、彼はまだほかに何か考えているのだろうか?
ジッと弥生さんを見ていると、少し照れているのか項をさすってコホンと咳払い。
「その……今まで渚には内緒にしていましたが、新婚旅行をやり直せないかと思っていまして。」
「本当に!?」
思ったよりも大きな声を出してしまったけれど、それどころじゃないわ。私は弥生さんのシャツを掴んで上目遣いに彼を見つめる。
「ええ、私はあの時の旅行をずっと後悔していたんです。今ならきっと渚と素敵なハネムーンを過ごせるでしょうから。」
「……嬉しい。もちろんすごく嬉しいけれど、お仕事を休んで大丈夫なの?」
弥生さんが決まった休み以外で休んだりするところは新婚旅行以外で見たことが無い。忙しい職場だと聞いているし、そんなに休めるのかしら?
「きちんと院長に話してあるので心配いりません。来月の連休に合わせて、数日休みをもらっていますから。」
「え、もう日も決まっているの?」
私は来月に連休がある事も知らなかったのに、弥生さんはしっかりチェックして計画を立てていてくれたみたい。どうしよう、嬉しくて頬がにやけてしまいそうよ?
「ホテルの予約も済んでいます。渚に内緒で私が勝手に決めてしまって申し訳ないと思ったのですが……少しだけ渚を驚かせようと思ったので。」
「ううん、すごく嬉しいわ!」
確かに旅行なら自分の行きたい場所もないわけじゃない。だけど今回はこうして不器用な弥生さんが私のために用意してくれたことが嬉しいのよ。