Don't let me go, Prince!


 この結婚生活を送っていくうえで、私は貴方と対等な立場でいたいと思うわ。弥生さんはそうではないの?私には貴方がわざとそういう冷たい態度を取っているようにも感じるの。

 このまま弥生さんの思う通りにはさせない。貴方を大切に思うからこそ、このままの2人の関係ではいけないと思う。

「弥生さんがそう望むのなら、私はすべて脱いでも構わないわ。……でも、私が一枚脱ぐごとにまだ話してない弥生さんの事を1つ教えてよ。私は一日に一枚ずつ、貴方は一日に秘密を一つずつ。私が貴方の為にこの気持ちを証明して見せるから、弥生さんも同じように私の夫で居続ける覚悟を証明して見せて?」

 賭けではあった。彼がこんな事をする必要が無いと突っぱねればそれで終わりだから。でも私は確信していた、弥生さんはきっと私の提案に頷くだろうと。

「何故知りたいんですか?私の事を知れば、渚はもっと逃げたくなるに決まっているのに。」

 弥生さんは私の事をナメてるんだわ。私が一度あの屋敷を出たのは貴方が嫌だったからじゃない。貴方に必要とされないお飾りとしての生活が耐えられなかったからよ。

「私は弥生さんが私の事を見てくれるのなら、貴方から逃げたりしない。貴方の事をもっともっと知りたくなる……こんな気持ちを弥生さんはなんて言うのか知らないの?」

 私の言葉に弥生さんが目を見開く。やった、彼の表情をここまで変化させる事が出来たのは初めてかもしれない。やっぱり彼にもちゃんと感情はあるんだわ。

 戸惑っている様子の彼の右手に両手を重ねる。何時触っても冷たい指先を私が温めてあげたいの。

「ねえ?貴方の事をたくさん教えて頂戴よ、弥生さん。」

 そう言って微笑むと、弥生さんは空いた方の手で私の頬に優しく触れる。

「……私を知って、本当に私の前からいなくならないと約束出来ますか?私には渚が喜ぶような話は1つも話してあげられませんよ?」

「弥生さんは馬鹿ね。私は貴方をもっと理解したいだけって事がまだ分からないの?」



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