Don't let me go, Prince!
◇◇◇◇◇◇◇◇
「それでね、その時吉無田君ったら……」
「いいじゃないの、そのくらい。私ならそんな時は……」
お互いの愛する人の話をすれば姉妹で盛り上がってしまって、もうどれくらい経ったか分からない。
馨と顔を見合わせて、弥生さんと馨の彼氏の吉無田君の二人がどうしているかと思いリビングへ。
「あらぁ……?」
リビングのソファーに二人の姿は無くて……読みかけの本がテーブルに二冊置いたままになっている。
「なぎ姉、キッチンから何か声が聞こえない?」
妹に言われて2人でキッチンへ。そう言えば何だかいい匂いがしているような……
2人でそっとキッチンを覗くと、そこには男2人で料理本を持って食材と格闘している弥生さんと吉無田君の姿が。
もしかして話し込んでいる私たちのために、2人で昼食を準備しようとしてくれていたの?
「この食材、渚は好きなはずです。たくさん入れてあげたいのですが。」
「ああ、馨さんも同じものが好きですね。姉妹だと好き嫌いも似るのでしょうか?僕は一人っ子なので……」
弥生さんと吉無田君は意外と気が合うのか、今日会ったばかりとは思えない程自然に会話をしているのね。
それは馨も同じことを思ったのか、二人から目が離せないみたい。
「どうでしょう?私にも弟がいますが、好き嫌いまでは……」
弥生さんと神無さんは一緒に暮らしていなかったようなものだし、仕方ないんじゃないかしら。私だって馨の好き嫌いまで詳しく覚えていないし。
「弥生さんってあんなに喋る人だったのね。ずっと話し難い人かと思ってたの……」
馨は吉無田君と自然に話す様子の弥生さんに驚きを隠せないようね。仕方ないわ、私の家族は結婚当初から弥生さんの事をほとんど知らないままだもの。
「弥生さんはああ見えて意外と可愛い人よ?私にだけ甘えてくれるところとか……キュンとなるわね。」
「甘える弥生さん?それはちょっと見たい気が……」
馨はますます弥生さん達から目が離せなくなってしまった様子。だけど馨に見せてあげるのは普段の弥生さんだけよ?
「駄目よ、甘える弥生さんを見ることが出来るのは私だけ。馨だってそんな吉無田君を誰にも見せたくないでしょう?」
「それは、そうだけれど……」
残念そうに頬を膨らませる馨に笑いそうになっちゃう。この子も吉無田君と出会って随分素直に感情を出せるようになったのね。
「2人でこっそり覗きですか?楽しそうですね。」
「馨さんもお姉さんも隠れているのに、そんな大きな声で話していたらバレバレですよ?」
いつの間にか傍に来ていた弥生さんと吉無田君。お互いの特別な人に手を差し出されて、私と馨は顔を見合わせて立ち上がった。
「だって弥生さん達も楽しそうだったんだもの。男2人で何を話しているのか気になるじゃない?」
「吉無田君が私たちのために料理をしてくれてるのよ。それは、見たくなるでしょう?」
姉妹で口を揃えて、愛する人に甘えて見せる。
どうしましょう?いつもは弥生さん反応を見ているだけで楽しいけれど、今日は馨に甘えられて焦っている吉無田君を見ているのも面白いわ。
「渚、考えている事が顔に出ていますよ?渚は悪いお姉さんですね。」
番外編? 2人で見る未来3
どうやら私の考えている事は全て、弥生さんにはバレてしまっているようで……仕方ない人ですね、と言われてしまったの。