Don't let me go, Prince!
「ああ。ハナの妊娠が分かって弥生にも報告しようかと思ったが、お前の事を色々考えてまだ話す段階じゃないかなって思ったんだ。」
「……どういうことです?」
弥生さんは不思議そうにしているけれど、なんとなく私には分かってしまった。やはり新城さんは弥生さんの事をとても大切な親友だと思ってくれているのだわ。
「その頃、弥生はまだいろいろゴタゴタしていただろう?渚さんとの関係だって今よりずっと苦しいものだったはずだ。」
「それは、そうですが……」
私との関係も良いとは言えなかったし、家族との付き合い方でも悩んでいたはず。
そんな時に、子供の事を不安に思う弥生さんに余計なことまで考えさせたくなかったのだろう。言えばきっと真面目な彼が私との子供の事で余計に悩んでしまうから。
「だから、今なんだ。分かるか、弥生?」
新城さんは片手で赤ちゃんを抱いて、空いている方の手で弥生さんを指さすけれど……
「そんな事より新城、赤ん坊はきちんと両手で抱きなさい。」
しっかりと弥生さんに注意されてしまっていた。それはそうよね、弥生さんは小児科の医師だもの。それに私も両手で抱いて欲しいから、弥生さんの意見に賛成だし。
「弥生も今は家族の問題も少し落ち着いているし、渚さんとの関係も上手くいっている。そうだろう?」
「ええ、そうですね。だから赤ん坊を見せても安心だと?」
弥生さんが良く分からないという顔をしているのに、新城さんは自分が抱いていた赤ちゃんを弥生さんにそっと手渡そうとする。
「弥生も……勇気を出して次に進んでみてはどうかって、そんな友人のお節介だ。ほら、俺の子供をちょっとだけ抱いてみろよ。」