Don't let me go, Prince!
ねえ、どうしてそんなに不思議そうな顔をするの?私が貴方をもっと理解したいって事は、そんなに難しく考える必要がある事なのかしら?
それに何をそんなに不安がっているの?今までずっとほったらかしだったのに……私を必要としなかったのは弥生さんの方でしょう?
いままで落ち着いた大人の男性にしか見えなかったはずの弥生さん。その彼の様子が今までと明らかに違ってる。
困ったように視線を彷徨わせている、彼の素顔をもっと暴きたい。彼の事を知れるチャンスを逃したくないの。
「欲しいものがあったら、フロントに電話をすればよかったのよね?」
私はさっきお風呂に入ったことを思い出し、せっかくなので弥生さんの反応を見ようとある事を試してみる事にする。
「ええ、四ツ谷と言えばすぐに対応してくれますが。私が買って来てもいいですよ?」
「いいえ、従業員の方にお願いするわ。あ、そうだわ。弥生さんは黒と白、どちらが好み?」
私がついでとばかりに弥生さんに聞くと、弥生さんは不思議そうに「白ですけど?」と答えてた。……きっとそうだと思ったわ。
私は電話の受話器を取ってフロントの番号を押す。名前を名乗ると、すぐに女性の従業員が部屋の前まで来て対応してくれた。
「お買い物ですか?分かりました。どのような……?」
「……ええ、そう。お願いしてもいいかしら?……ふふ、旦那様を誘惑出来るような白のセクシーな下着をお願い。」
「何を言ってるんですか、渚!?」
私と従業員の会話を聞いていた弥生さんが慌てた様子で入り口までやってくる。この人でも焦ることがあるのね。何の興味も無い顔をされたらどうしようかと思っていたから良かったわ。