Don't let me go, Prince!



「良かったわね、お母さんの傍だとやっぱり笑顔が違うわ。」

 私の傍にいてくれた時も爽太君はニコニコと笑ってくれていたけれど、満面の笑みを見せられるとやはり母親は特別なのだと思う。
 爽太君が必死で抱きついているお母さんが少し羨ましい気持ちもある。

「渚もきっと良いお母さんになれますよ。夫の私が保証します。」

「弥生さん……?」

 今まで彼が私たちの子供について、何かを発言することは無かった。
 弥生さんが私に触れる時はいつも避妊している事も知っていたし、私から子供の事で彼を急がせることはしないでおこうと決めていた。
 だから……弥生さんの言葉を最初は聞き間違えかと思ったの。

「私も渚に負けず、いい父親になれるでしょうか?」

「なれるわよ!絶対に優しくて素敵なお父さんになると思うわ。」

 もしかして弥生さんも子供の事を前向きに考えるようになってきている?新城さんの話を聞いて、実花さんを抱っこして……弥生さんの中で少しずつ気持ちが変化しているのかも。

「渚にそう言ってもらえば安心ですね。さあ、散策の続きをしましょう。」

 当たり前に差し出された手に、自分の手を重ねる。いつまでも年をとっても貴方とこんな関係でいたい。

「そういえば、渚は男の子も女の子も欲しいのですね。私は一人目の子は女の子が良いと思うのですが。」

「……女の子、弥生さんが溺愛しそうな気がするわ。私はヤキモチ妬かずにいられるかしら?」

 そんな事を話しながら、2人で緑豊かな遊歩道を楽しみながら歩いた。
 その後の夕食も弥生さんが選んでくれただけあって……とても豪華で、普段食べることのない山の幸も沢山いただいたのだった。

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