Don't let me go, Prince!
お風呂から上がっても、弥生さんはぼんやりと考え事をしているようだった。私が何かおかしなことを言ったのかしら?
「弥生さんお酒でも……ごめんなさい、弥生さんはお酒は嫌いだったわね。そうだ、せっかくだから私は少し飲んでみようかな?」
お酒でも飲めば少しでも明るい気分になるかなと思い、注文するためフロントに電話をかけようとしたのだけど……
「今日は渚もお酒は飲まないでください。せっかくの旅行で楽しみにしていたところをすみませんが、今回は私のお願いを聞いてくれますね?」
「え、ええ……」
そっと受話器を戻されて、私はそのまま弥生さんの腕に抱き上げられる。びっくりして悲鳴を上げそうになるけれど、弥生さんは気にせず奥の部屋へ。
二組の布団が敷いてあるだけの奥の部屋。私をそっと布団の上に降ろしてから、そのまま弥生さんは私の浴衣の紐をほどいた。
普段ならそのまま肌に触れてくるはずなのに、今日の弥生さんはじっと私の身体を見ているだけ。
「どうしたの、弥生さん?」
明るい場所で身体をジッと見られると恥ずかしくて、隠したいのに……なぜかそうする事も出来ない。
「ここに……」
弥生さんがそっと私の下腹部に触れる、それは凄く優しい手つきで。でも弥生さんが触れた場所って……
「渚のここに……私たちの子供を望んでもいいですか?」
「弥生さん、それってもしかして……」
弥生さんの言葉に、思わず涙が出そうになる。彼の心が決まるまでちゃんと待っていようと思っていたけれど、本当は私は弥生さんとの子供が欲しくて堪らなかったから。