Don't let me go, Prince!


 弥生さんは今にも下着を投げつけてしまいそうになっていた私の肩に手を置き、ゆっくりと腕まで撫でてくれる。こんな子供のような私に呆れず、たとえ無表情でも私の事を放っておくようなことはしなかった。

「弥生さんは私がこの下着をつけている所を見たいと?」

 信じられない。弥生さんの好みはもっと大人っぽいと思っていたもの。だから私は彼の前ではずっとお淑やかな大人の女性を振る舞ってきてたのに。

「だからそうだと言っています。夫が妻に好みの下着を付けてもらいたいと思う事はそんなに変な事ですか?」

 いいえ、変ではないと思うわ。好きな人を自分好みに変えてみたいのは男性だって女性だって考える事だと思うもの。ただね……弥生さんの場合、それがイメージと違いすぎたのよ。

 弥生さんの素直な言葉にますます顔が熱くなる。弥生さんが私の下着姿を見たいと言うなんて、触れてもくれないと半年間ずっと落ち込んでいたのが嘘のようだわ。

「弥生さんが考えてるような可愛い姿にはならないと思うわよ?それでもいいの?」

 手に持った下着をもう一度見て見る。こんな可愛らしい下着をつけたことの無い私は、正直なところ可愛く着れる自信が無かった。

「私が渚に似合うと思って選んだんです。渚、早く着替えてきなさい。貴女が提案した、私との勝負を今から始めましょう?」

 そうだったわ。私がただ服を脱ぐだけではなかった。私が服を脱ぐ代わりに、弥生さんが今まで話してくれてない事を私は知る事が出来るのだわ。

 何でもいいの、弥生さんが自分から話してくれる事ならば。ひとつずつでいいから、お互いの事を何か知り合っていけばいいと思うの。

「そうだったわね。弥生さんもちゃんと話す内容を考えておいてよね?」

 そう言って私は弥生さんに強気の笑みを見せて脱衣所へと戻った。私が脱げるのはブラとショーツとこのワンピ型のパジャマ。勇気を出せば少なくとも三つの話を聞く事が出来る。


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