Don't let me go, Prince!
ふと私は弥生さんに対しての疑問を浮かんだ。弥生さんは私に妻でいようとする気持ちを証明して欲しいと言った。その言葉に偽りがないのならば彼は私が妻でいることを望んでいるという事になる。
ならばなぜ指一本すら触れず、私の事を避けるように今まで過ごしてきたのかしら?
今日は彼といつもよりも多く話をした。話していて思ったの、彼は無表情だがやはり感情の無い人ではないわ。きっと、とても気持ちを伝えることが苦手なのでしょうね。
抑揚のない口調や変化の乏しい表情も、もっと二人の時間を増やせば理解していく事が出来るのではないかしら?
簡単に逃げようとせずもっと私から話せばよかったのかしら?でも、逃げたからこうして二人で話せる環境が出来た。
私は袋から下着を取り出して並べる。本当に可愛いのしかないわね。その中から一枚を選んで身に着ける。
鏡で自分の姿を確認すると、見慣れない格好の所為かやはり恥ずかしい。やはりこれを見せるとなればそれなりの覚悟は必要で、弥生さんの言う通りこれは2人にとってこれはどちらも引けない勝負なのかもしれないと思った。
ワンピ型のパジャマを着て部屋に戻ると、弥生さんは部屋の壁の肖像画を見てる。若い頃の母の絵を見ているはずなのに弥生さんの表情は硬い。
「綺麗な、お母様だったんですね?」
「渚には母がそう見えますか?」
弥生さんはこんなに美人なお母さんを、綺麗だと思ったことは無いの?この部屋を残してくれたと言っていたけれど、弥生さんにはこの場所に特別な何かがあるような気がする。
「弥生さんはそう思った事はなかったの?私の母がこんなに美人だったならば、きっと参観日とかは鼻が高かったでしょうけどね?」
私は会話を弾ませようと思ったのだけれど、その言葉で弥生さんは黙ってしまった。