Don't let me go, Prince!
弥生さんはただじっと私の顔を見つめてる。ねえ、私はそんなにおかしなことを言ったかしら?私は三つ出来る質問の一つでちゃんと聞こうと思ってる。弥生さんがどうして逃げた私を連れ戻しに来たのかを。
聞かなければあなたは何も答えてくれないのなら、私だってどんな手でも使う事にするの。
弥生さんがまだ本当の気持ちを私に伝える事が出来ないのなら、先に私が伝えていくことにしたの。もうお淑やかに大人しく言われたままに待つのは止めたのよ!
「私がこれだけ勇気を出すんだから、ちゃんと見ててよね?」
私は最後の一つのボタンを外すと、勢いよくパジャマを脱いで床に落とした。
弥生さんの瞳に白い下着だけの姿の私が映る。今までこんな明るい場所で男性に下着姿を見せるようなことは一度も無かった。
私と弥生さんは一言も喋らないでただ見つめ合っていた。こんな状態でも無表情なんてね。今、弥生さんは何を考えているのかしら?
「渚の気持ちは伝わりました。取り合えずここに座りなさい。少し長い話になるかもしれない。」
差された椅子に座ると、弥生さんは自分の上着を私の肩から掛けてくれた。
……弥生さんの整髪料の香りがする。
「あ、ありがとう、弥生さん。」
「……何から話したらいいのでしょうか?正直うまく話せる自信がありません。私は渚に私の家族の事をどこまで話しましたか?」
「……え?お義父さんと亡くなったお義母さんだけよね?結婚式に来ていたのはお義父さんと親戚の方。後は職場の人だったわよね?」
でもふと気付いてしまう。私は他に兄弟がいるか問うたことも無かったし、お父さんが別の誰かと住んでいるのかも確認したことは無い。
「結婚式には来てませんが、私には義理の母と異母弟が一人います。」