Don't let me go, Prince!
今度は終わりを始まりに?
「ちょっと渚! そんな所に荷物を置いたままじゃ邪魔なんだから、さっさと二階へ置いてきなさい」
朝から元気よく叫んでいるのは私の母だ。気が強くて言いたいことをハキハキという。なぜこんなに荷物で怒っているのかというと、実は昨日帰ってきて私はそのまま朝まで起きなかったのだ。寝不足だったらしく丸一日寝てしまってた。
「はあい、私の部屋また使っていいわよねえ?」
何か色々荷物が置かれていて片付けをしなくては駄目ね。持ってきた面接用のスーツやバッグを確認する。
「渚、弥生さんのトコでは仕事してなかったみたいだけど、戻ってきたからには仕事しなきゃね。」
「もちろんよ、ほうら、求人情報誌! ちゃんと持ってきたんだから!」
母ならそう言うと思っていたし、私もここでは働く気満々だった。ここにいると自分に戻っていく感じがする。
【ピンポーン……ピンポーン……】
珍しい、まだお昼前にお客さんかしら?
「渚出てきて?」
「はあい」
出るまで何度も鳴らされるインターフォン、全くそんなに鳴らさなくたって出ますよ。
「はあ……い……?」
「迎えに来ました渚。私は家から出ないように言ったはずですが?」
え? 、まだ仕事の時間よね? 私は目の前の人間が幻覚なのではないかと疑ってしまう。
「渚、この紙は何です? 私は渚と離婚について話をした記憶はありませんが?」
彼の右手にはクシャクシャに握りつぶされた離婚届。そんなにしては出せないじゃないの。