Don't let me go, Prince!
彼の言葉の意味をやっと理解する。彼に性的な意味で求められたことは一度も無かったから、私は弥生さんからハッキリと言われるまで気付けなかった。
「そういう、ことなの?」
私が聞き返すと、弥生さんは静かに頷く。私が弥生さんに妻として抱かれる……?
「ええ、ですから渚が選びなさい。貴女が決めたことに私は決して文句など言いません。私も自身の事を渚に話す覚悟を決めなければいけませんから。」
「……」
弥生さんは本当に狡いわよ。
いままでほとんど触れても来なかったくせに……私はいつからか弥生さんにはそんな風に見られてないのだと、勝手に思い込んでいた部分もあった。
服を脱げと彼から命令された時でも、弥生さんから性的な意味で求められている訳では無いと何となく分かっていたし。
「今日は渚も一人で考えたいでしょう。私は別に部屋を取っているのでそこで休みます。」
弥生さんは別の部屋の鍵を私に見せる。この部屋の鍵と違う、普通のホテルの部屋の鍵。
別の部屋まで用意していたという事は、彼の中でこの会話は決まっていた事なのね。
「明日の19時、私が戻って来た時に貴女がここに残っていたならば……私は渚を抱きます。」
そう言って弥生さんは鞄とクリーニングされたスーツを持って部屋から出て行ってしまう。
静かに閉じられた扉の音を確認した後、私はへなへなとその場にしゃがみ込む。
彼が昨日言っていた言葉の意味はこういう事?二人の時間がもっと続けば良いと思いながらも、彼は何かを諦めた様子だった。
分かったわ、弥生さんがそう望んでくれるのならば。
____貴方が思っているほど私は、怖がりじゃないのよ?
弥生さんがそんな風に簡単に諦めれないような存在になってあげるから。だから、もっともっと私の事を信頼してよ。