Don't let me go, Prince!
私は言いたい事を言った後、弥生さんから目を逸らさない。だって私は間違っている事を言ってるつもりは無いもの。
弥生さんがどれだけ酷い人だったとしても、私はもう貴方の手を離したりする気は無いのよ。
「私には渚の考えがよく分からない時があります……信じれば後で自分が余計に苦しむ時もあるんですよ?」
「そうね。私だってそんな経験が無いわけじゃないわ。だからと言って、私はこの性格を変えたりなんてしたくないの。好きな人の事を信じたい、そんなのは自然な感情なんだと弥生さんは思わない?」
ごめんね、弥生さんの心の奥にあるものを知らないで私の感情ばかりで話をしてしまって。
でも知って欲しいの、私の心の中の貴方を想う気持ちは真っ直ぐなものなんだと。
「……渚の事を知れば知るほど、私は貴女を手放せなくなる。後でやっぱり逃がして欲しいと泣いても知りませんよ?」
「大歓迎だわ、弥生さんに私を泣かせる事が出来るのかしら?私の方こそ弥生さんを逃がしてあげるつもりなんて無いのよ。」
ふふふっと微笑んでみせると、弥生さんは静かに頷いてくれた。本当に弥生さんが私を必要としてくれてるなら、二度と簡単に手放そうとなんてしないでほしい。
逃がして欲しいなんて、私は一度も思ったことなんて無いのだから。
「渚……私は明日、朝から人に会いに行ってきます。帰りが何時になるか分からないので、食事は取っておいてください。」
「え?明日は一緒には過ごせないの?お仕事はお休みなんでしょう?」
正直な気持ちを言えば、私はかなりガッカリしてしまった。この場所で弥生さんと一緒に過ごす時間は優しくて心地よかったから。
「このまま渚とこの場所に居続けることは出来ないんです。渚とのこの先を望むから、私はきちんと自分の中の問題を整理してきます。」
彼にしては前向きな発言だと思う。けれどその問題が何なのかも知らないまま、私はまた貴方の帰りを待たなくてはいけないのだろうか?
「私は一緒には行けない?私はまだ弥生さんの支えになることは出来ないの?」