Don't let me go, Prince!


 その部屋に一つしかないベッド。その上に私を優しく乗せると、弥生さんは表情一つ変えず私にそう言い放った。

「何を言ってるの?そんな馬鹿なこと出来る訳ないでしょう?……こんな所、すぐに抜け出してやるわよ。」

 私がホテルに連れて来られたからって大人しくしているような女にでも見えるのかしら?結婚して半年、貴方は本当に私を何も見て来なかったのね?

「渚はこの部屋から出ることは出来ません。この部屋は外からは普通に開きますが、中からは特殊な鍵を使わなければドアが開かない。その鍵は私しか持っていないんです。」

 弥生さんは見たことの無い形状の鍵を私に見せる。弥生さんの言う事が本当ならば私だけではこの部屋からは一歩も出られないという事になる。

 ……ちょっと待って?この人は私を監禁でもするつもりなの?

「なぜこんな事を?」

「渚が逃げるからです。たとえ渚からどう思われようと、私の前から勝手に消えることなど許すつもりは無いんです。」

 許す?何故……今更私が自分の思うように行動することに許しを得なくてはいけないの?今までずっと好き勝手してもほったらかしにしていたじゃない。

「許さないのならどうするって言うの?私が貴方の言う事を大人しく聞くと思っているわけじゃないでしょう?」

 どんな私を見ても表情一つ変えない貴方に負けたくなんてないのよ。わざと挑発的な言葉を返す。

「聞かないとは言わせません。先に私の言いつけを破ったのは渚、貴女の方ですから。」

 言いつけ?それって弥生さんが言った「出張中は家から出るな」って言葉の事?離婚届ではなく、それだけの事で怒っているの?意味が分からないわ!

「……服を脱ぎなさい、渚。」


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