Don't let me go, Prince!
「渚、ちょっとこっちに来て貰えますか?」
食事の片付けを終えると同時に、紅茶を準備してソファーで待っていてくれた弥生さんに呼ばれて彼の隣に座る。
「渚は昨日……私の事が怖くなったり、気持ちが悪くなったりしなかったのですか?」
「弥生さんの、何が怖いの?」
こんなに優しくて私の事を大切にしてくれている弥生さんのどこが怖くて気持ちが悪いというのだろう?
「昨日……渚は私の素肌に触れたでしょう?この肌に触れられたくないとは、思わなかったのですか?」
「思わないわ。確かに触れた時に驚きはしたけれど……弥生さんはその事を私に知って欲しい気持ちもあったから、脱いだのでしょう?」
肌着までは脱がなかったけれど、彼は肌の凹凸を私に曝け出す覚悟はしたはず。私がそれに気付きどういう反応をするのか、知りたかったんでしょう?
「そうです、私はこの傷の事を渚に知って欲しかった。この醜い私も渚は受け入れる事が出来ますか?」
「……脱いで、弥生さん。服を脱いで私に全てを見せてみてよ。弥生さんが私の夫でありたいと思ってくれているのなら、私は絶対に貴方の全てを受け入れて見せるから。」
いつだったか、同じような会話をしたような気がするわね。立場は逆だったけれど。
「本当に……渚を信じていいんですか?」
弥生さんの少し不安そうな声。もしかしたら、弥生さんは今まで彼の傷を見た誰かに何度も傷付けられてきたのかもしれない。
「驚きはするかもしれないけれど、逃げたりはしない。弥生さん自身が嫌いだと思っている部分も、私は全て受け入れて愛し合いたいの。」