Don't let me go, Prince!
「……は?何を、言って……?」
弥生さんから発せられた言葉の意図が理解出来ない。この男は結婚してからの半年間、一度も私の服を脱がそうとしたことなどない。私の身体に触れる事も無かった彼の言葉とは思えない。
「離婚届はここにある、渚はまだ私の妻です。私は貴女が本気で私から離れたがってるとはどうしても思えない。」
「それが何だって言うのよ?服を脱ぐ行為とそれが何の関係があるって言うの?」
殆ど傍にいることなど無かったというのに、私の本音を知ったように話す弥生さんにイラつきが隠せない。その言葉が当たっているからこそ、余計に私を反抗的にさせる。
離れたい、離れたくない。そんな矛盾する気持ちのまま書いた離婚届は、彼の手でぐしゃぐしゃにされてホテルの部屋に設置された小さなテーブルの上に置かれている。
「私は渚と離婚するつもりはありません。渚も同じ気持ちなのだと私は信じたい。だから……」
「だから?」
弥生さんの指が私の首をなぞり、私の身体が震えるの。この震えは初めて見る弥生さんの「男性の顔」に対する恐怖からなの?それとも期待?
……私は知らない、この男がどんな風に私に触れるのかを。
離婚する気は無く、私の気持ちは彼にあるのだと疑ってないくせに信じたいなんて……貴方は何も持たない私に何を望んでいるの?
「脱いで証明して見せてください。渚にまだ私の妻でいようと思う気持ちが少しでもあるのならば。」
___どうして?あの2度以外、この指先すら私に触れることが無かったのに。ふざけないでよ?今更、誰が貴方なんかに_____!