Don't let me go, Prince!



「私は自分の夫の優しさと強さを知る事が出来て、良かったと思ってるわ。貴方にどれだけ傷痕があったとしても、私の選んだ人に間違いはなかったと自信を持って言えるもの。」

 無表情の彼からのプロポーズを受けた時、迷わず手を取った自分の選択は間違っていなかった。
 結婚してから遠回りはしたけれど、こうして彼の大切に思っている人への愛情の深さを知る事が出来たのだから。

「私の事もお母さんと同じように大切に想ってくれている?」

「初めて出会った日から、誰よりも渚の事だけを深く愛しています。母を思う気持ちと渚を想う気持ちは違いますから、同じようにとは言えませんが。……ほら、私の心はこんなにも貴女だけに反応する。」

 右手をそっと弥生さんの胸に当てられて、彼の少し早い鼓動を直に感じる。
 私は「四ツ谷 渚」という彼にとって特別な存在だと彼の心が教えてくれる。

 ____あの(プロポーズ)時の彼の真剣な瞳、誰よりも愛されてると感じたのは気の所為なんかじゃなかった。

「私だって……弥生さんの事を負けないくらい想っている自信はあるわ。」

 私がそう返すと、弥生さんはそっと私を引き寄せてその腕で包んでくれる。私の彼の背中に両腕を回して少しの隙間もないくらいにぎゅうぎゅうと抱き合う。

 そのままそっとソファーに座らされて、彼から何度も甘いキスの雨を降らされる。触れる唇が「私の事を愛してる」と言葉よりも熱く伝えてくれる。

 私も同じように貴方を想ってる。やっと素直な気持ちで貴方と向き合って触れ合える。

 沢山のキスをした後に、彼がそっと私の頬に手を添えておでこをコツンと当ててきた。子供が甘えるような仕草に私はもっと彼に夢中にさせられてしまうじゃない。
 そのままスリスリと肌をすり寄せられて、彼が私にもっと甘えてくるので私は少し気になった。

「弥生さん……どうしたの?」

「もし……私があの屋敷を出たいと言ったら、渚は私に付いて来てくれますか?」

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