Don't let me go, Prince!



 私は出て行くときに、弥生さんが迎えに来てくれるかどうかに賭けたの。
 監禁されるなんて予想はしてなかったけれど、こうしてお互いの気持ちを確認し合うことは出来たのだから前の2人の関係よりもずっといい。

「迎えに行った時、渚は怒っていたので私の迎えが嫌なのだと思っていました。本当に嬉しかったのですか?」

「あの時は素直になれなくてごめんなさい。嬉しかったけれど、私も意地になっていたのよ。」

 あの時の事を思い出すと少し笑えるわ。弥生さんがいきなり現れて話し合う間もなく連れ去られたんだもの。
 驚いて素直になるとかそんなことを考えている余裕はなかったわね。

 駐車場に着くと弥生さんが車の助手席のドアを開けてくれたので、私はゆっくりと車に乗り込みシートベルトを付ける。
 弥生さんは助手席のドアを閉めて、運転席に乗り込むとエンジンをかける。

「二時間程度で着くと思いますが、先にコンビニにでも寄っていきますか?」

「そうね、二時間だと飲み物くらいは無いとね。甘い物もついでに欲しいけれど。」

 普通の夫婦のような会話を楽しみながら、お店に寄って買い物をしたりして私たちは彼のお父さんの住む場所へと向かう。

 彼のお父さんの今住んでいる家は弥生さんに与えられた屋敷ほど大きくないらしく、車を先に近くの駐車場に止めてくると言われて近くの公園で降ろされた。
 住宅街の中の小さな公園のベンチに座って弥生さんが戻ってくるのを待つ。

「あれぇ?ははっ……渚ちゃん、本当に来ちゃったんだ?」

 後ろから聞こえてきた明るく少し茶目っ気のある笑い声。どこかで聞いたことのあるこの声の主は……

「けいさん、どうしてここに?」

 後ろを振り向くとフワフワの茶髪で少し目が細い男。間違いない、けいさんだ。
 ホテルで会ったはずのけいさんが、あの場所から離れたこんな所に何故いるのだろう?
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