―番外編―皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします

―― あ、いた!

大きな木に隠れて、庭園中央の大きな噴水台を、眼鏡の奥からひょっこり覗く。

縁に腰を降ろして、すらりと長い脚を組んで、本を読んでいる――天使様みたいなカレ。

今日もいる。

名前はヘンリー。歳は十歳だって言ってた。

くるんくるんの蜂蜜色のクセ毛に。

晴天の青空みたいなキラキラした瞳。

春の日差しが温かい今日は、白いシャツと、青いブリーチズを着ている。

ヘリオンスの大臣さまをお父様に持っていて、とても聡明で優しい人なの。

転んで泣いてるところを助けてくれたって、お母さまに報告したら、


―― 『運命の人』かもね?


お母さまはそう言ってた。

お母さまがそう言うなら、そうかもしれないって思うの。


でも、うんめーのひとってなんだろう?

< 5 / 18 >

この作品をシェア

pagetop