―番外編―皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします
―― あ、いた!
大きな木に隠れて、庭園中央の大きな噴水台を、眼鏡の奥からひょっこり覗く。
縁に腰を降ろして、すらりと長い脚を組んで、本を読んでいる――天使様みたいなカレ。
今日もいる。
名前はヘンリー。歳は十歳だって言ってた。
くるんくるんの蜂蜜色のクセ毛に。
晴天の青空みたいなキラキラした瞳。
春の日差しが温かい今日は、白いシャツと、青いブリーチズを着ている。
ヘリオンスの大臣さまをお父様に持っていて、とても聡明で優しい人なの。
転んで泣いてるところを助けてくれたって、お母さまに報告したら、
―― 『運命の人』かもね?
お母さまはそう言ってた。
お母さまがそう言うなら、そうかもしれないって思うの。
でも、うんめーのひとってなんだろう?