突然の夕立、びしょ濡れの先輩と雨宿り
9.雨に濡れる男子高校生と腹筋
「うぉぉぉぉぉーっ!」
叫び声のようなものを聞いて、私は体の動きを止めた。
こんな雨の中、気のせいかなと思いつつ耳を澄ましてる。
鏡を見つめながら唇にリップを塗っていた、次の瞬間。
キキィー! ギリギリ、ゴゴォー! キィィー!
「えっ、自転車のブレーキ?」
私は呟きながら顔を上げ、視線を鏡から目前に移動させた。
「えっ、ええっ!」
目の前に、びしょ濡れの男子高校生。
学生服姿で自転車にまたがったまま、私を見つめてる。
髪の毛先や顎から滴り落ちる水滴、濡れたYシャツが透けて地肌に張り付き……
割れた腹筋が6パックで、胸や肩も整った美しい筋肉美が露わに……
目のやりどころに困るというか、あまりにも突然で、リップと手鏡を持ったまま見つめてしまった。
「雨宿り、させてもらってもいいかな……」
嫌みのない優しい笑顔で、男子高校生が私に話かけてくる。
「どっ、どどどどうぞ……」
私は動揺して、口ごもってしまう。
すると彼は、私の言葉に笑顔を返してきた。
でも、その笑顔に私は見覚えがある……