突然の夕立、びしょ濡れの先輩と雨宿り


 男の子の言葉を聞いて、私は動揺しながら問いかけた。


「あの、どうかしました?」


「覚えのある、懐かしい香りがしたんだ……」


 顔を拭き終えると、彼は前を見つめた。


 降り続く雨、水溜まりに広がる丸い波紋の数々。

 タイヤから水しぶきを上げて走る車。

 レインコートを着て下校する小学生の姿。

 歩道を行き交う、カラフルなビニール傘。


 乗ってきたスポーツタイプの自転車から、滴り落ちる水滴。

 不快な湿度に、灰色の空。


 私は、この状況に耐えきれず口を開こうとする。

 黙り込む彼に向かって、私から話かけようとした。



 次の瞬間……





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