突然の夕立、びしょ濡れの先輩と雨宿り


「どうした、タライちゃん?」


 その言葉を聞いて、私は過去の思い出から我に返った。


「その呼び方、嫌いです!」


 渡会(わたらい)の、わ、だけ抜いてタライって誰かが部活で言い始める。

 先輩も面白がって言ってきたけど、私が傷ついてると聞いてすぐにやめた。

 その翌日、誰も私のことをタライと呼ばなくなる。


 後で友達に聞いた話だと、先輩がみんなに注意してやめさせたらしい。

 先輩の言うことは、みんな素直に聞き入れてくれる。

「タライと呼んでスマン」と、先輩が謝ってくれたことを今でも覚えてる。


「やっぱり、今でも怒ってるんだな、スマン!」


 ちょっと照れ笑いを見せながら、昔と同じ仕草で謝ってきた。

 だけど、疑問は残る。



 どうして、タオルの臭いを嗅いだだけで私ってわかったんだろう……





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