突然の夕立、びしょ濡れの先輩と雨宿り
10.フローラルの香り
「フローラルの香りがした……」
「えっ……」
私は好んで、昔からリンスやトリートメントはフローラルの香りにしていた。
先輩がつかったタオルも、私が濡れ髪の水分を拭き取ったから香りが染み込んだのだろう。
それがどうして……
「渡会が走った後、フローラルのいい香りが漂っていた」
「それって、中学一年生の時ですよね!」
「このタオルから、同じ臭いがして気づいたんだ。中学のころを……」
先輩の心の片隅に、私の存在が残ってたなんて嬉しすぎるよ。
髪が短くて、日焼けした小麦色の肌だった陸上部の頃とは見た目が違う私。
髪は腰まで長く、筋肉は落ちて細身のスタイルに変貌してしまった。
短いスカートに着崩した制服、高校生になった今の姿をチラッと見ただけで分からないはず。
当時の私と照らし合わせても、あまり共通点がないのに気づいてくれた。
「あの、先輩、私……」