ラブ・ボイス
「美優さんは、aiのYOUって曲は知ってる?」
「え、まぁ…」
aiのYOUとは、最近高校生の間でとても流行っている女性シンガーの曲だ。
バラードで、切ない恋心を歌ったこの曲はわたしも大好きで、よく口ずさんでしまう。
「じゃあ、今ワンフレーズでいいから、歌ってみてもらえないかな」
「…えっ!?う、歌う!?」
突然の提案に、思わず後退りしながら聞き返した。
「ごめんね。訳がわからないよね。
でも、これは美優さんにしかできない仕事なんだ。」
私にしか…できない仕事…?
「お願いします。どうか…!」
スーツ姿の大人の男性に頭を下げられる。
そんなこと、急に言われても。
だけど、この人、困っているみたい。
「わたし、歌、うまくないんです。
それでも…いいですか…?」
「美優。」
「美優さん…!」
わたしにしかできない
その言葉が胸を打った。