ラブ・ボイス
いつもと変わらない朝。
ドアをどんどんと叩くうるさい音で、わたしは目を覚ました。
「もーう、お母さん何?…って!」
眠い目をこすりながら、母親だと思われる人影に声をかけたけれど、そこにいたのは、
「よ!みゆ!」
幼馴染の、杉田翔(すぎたかける)だった。
「なんで勝手に入ってきてんのよ!」
わたしは思いっきり枕を投げつける。
「…って、いってぇな!」
不機嫌そうな翔は、急に距離を縮めたから、
わたしは慌てて後退りした。
「せっかくの入学式だから、お前のこと呼びにきてやったんじゃねぇか!」
そうだった。
今日は待ちに待った高校の入学式だった。
「だ、だからって部屋まで来なくていいから!わたしもう子どもじゃないんだよ!」
「へ、どーだか。」
薄ら笑いを浮かべる翔の視線の先にあるのは、
子どもの時から集めているかわいいぬいぐるみの数々や、わたしのイチゴ柄のパジャマ。
「うぅ…」
たしかに、これじゃ中学生の頃と
何も変わらない。
一方の翔はというと、すっかり伸びた身長に、茶色く染めた髪の毛。首元にはシルバーのアクセサリーがキラリと光っている。
なんか、悔しい…。
翔って、いつの間にこんな大人っぽくなったんだっけ?
「とにかく!着替えるから出てってよー!」
わたしはどうにか部屋から翔を追い出した。