フォンダンショコラな恋人
まさに立板に水である。
弁護士になるべくしてなった男だ。

「まあ……実際そうだ」
「それより、倉橋が少しだけ本気だったのが気になったな。こんなくだらない案件じゃなくて、いつか別のもっと熱くなるような案件で倉橋とは戦いたいなあ……」

「そんなことにはならない」
そんな弁護士同士の泥仕合いなど、倉橋は考えたくもない。

「ま、そうだな。また何かあればよろしくな」
そう言ってにこにこと真田は帰っていった。

「面白い同期だな」
「めんどくさい奴なだけです」

その後の判決は『被告は極力早く判断をすること。原告もそれについては協力すること』

履行期、つまり約款に定められている支払いの期間内に極力判断をすることが付言され
「被告側弁護人は何か言いたいことはありますか?」
と聞かれ、倉橋は
「はい」
と返事をした。

「今回は私の依頼人だけのことですが、仮に他にも契約があることが判明し、約款に違反した多重契約だということが判明したら、そもそも契約事項自体が無効になるのだということを申し伝えておきたいと思います」
< 104 / 231 >

この作品をシェア

pagetop