フォンダンショコラな恋人
「お前も楽しみにしとけよ。あ、オレは裁判所に寄ってから帰るから」
「あ、はい」

打ち合わせを終えてエレベーターを降りると、ちょうどランチから帰ってきた翠咲が、何人かの社員と一緒の姿を見かける。

翠咲も倉橋に気づいて頭を下げて、通り過ぎようとした。

「宝条さん」
倉橋はその名を呼ぶ。

「え? はい……」
翠咲は他の社員に、先に行っていてと声をかけていた。
はあいと返事をして彼女達はエレベーターに消えていった。

「先生。お疲れ様です。今日は打ち合わせですか?」
いつもと同じ。
何もなかったかのような宝条だ。

「ええ。他の部署で。宝条さん、次の土曜日は空いていますか」
「次の土曜日……。ごめんなさい。用事が入っています」
「そう」

倉橋はできたら、宝条と一緒に花火大会を見たかったのだが、予定があるのでは仕方ない。

「また、予定が合えば食事に誘っていいか?」
そう聞くと、翠咲は目を見開いて驚いている。
いい加減慣れてくれないだろうか。
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