フォンダンショコラな恋人
9.限定いちごミルク酎ハイ
花火大会が終わったのち、翠咲は浴衣を結衣に返そうと思ったら、結衣は早々に会場から姿を消していた。

『浴衣は今度でいいので、今日はそのままお帰り下さいねー』
とメッセージアプリにメールが残っている。

「どうした?」
じっとスマートフォンを眺める翠咲に倉橋が声を掛ける。
「うん。結衣ちゃんからのメール。今日は浴衣着て帰って下さいって」

「そうか。良い後輩だな」
「そうね」
「では、帰るか」

ん、と倉橋は翠咲に手を差し出す。
ん?と翠咲はお手をするように、ぽんと手を載せた。

「違う。荷物を寄越せってことだ」
「……あ? ああ! ご、ごめんなさい!」
翠咲は着替えが入った大きな紙バッグを肩に掛けていた。

「いや……ふ、……ははっ」
怒るかと思えば、倉橋は笑っている。翠咲はなんだか恥ずかしくなってきた。

そんな風に笑う?

「あはは……、お手とかするか?」
「しないけど」
だって、急に付き合うってなってたし、緊張したんだもんっ。
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